Forever(新郎からご両親へ)


Forever
大坪 エミ 作
Skei Elliott-Morris 絵

お父さん、お母さんへ
今日まで私を育ててくれて
本当にありがとう。
数えきれない
ありがとうの想いを込めて。
2013年6月16日
ララシャンス博多の森にて
亮より

朝露の雫が、
降り注ぐ太陽の光を浴びて
小さなダイヤモンドのように
キラキラと弾んでいるよ。
小鳥たちの快活なさえずり、
草花の生命の息遣い、
手でつかみたくなる空気。
ありのままに美しくて、
なにもかもが
澄んでるね。
お父さん、お母さん、
今日の僕は、
この朝露のように
キラキラと輝いていますか?

つぼみが膨らむ躍動感。
一枚一枚の花びらが、
深く息を吸って
そして、ゆっくりと吐きながら
太陽に向かって開いていくね。
朋子と僕は、
一輪の花が咲くように、
今、生きている喜びを
太陽に向かって
押し上げてるみたい。
お父さん、お母さん、
生きてるって素晴らしいね。

小鳥たちの
おしゃべりなさえずり。
小さな存在感を示す
虫の羽音。
草花の吐息。
大きな木々の重なり。
生命に富んだ森。
生きてるって
きっとこういうことなんだね。
お父さんとお母さんが
辻 亮という命を
大切に育んでくれたから、
僕も命の尊さが
わかる人間になったよ。

水分をたっぷり含んだ空気を
大きく吸う。
呼吸のポンプは、
耳を澄まし、
リズムを守り、
生命の力を全身に送り出す。
それは、
僕の呼吸の速度を
知っている。
それは、
僕の呼吸の量を
覚えている。
どうしてだろう?
それは、
お父さんとお母さんだったから?
当たり前だと思ってたことに
今、やっと気づいたよ。

ねぇ、耳を澄まして。
花たちのはしゃぐような声が
聴こえてこない?
虫たちは、
高まる胸の鼓動に合わせて
羽を小刻みに振動させて飛び回っているね。
小さな出会いは、
温かい体温を帯び、
一心同体の輝く生命へ奇跡の変化を遂げていく。
必然が必然を呼び、
すべての偶然が結ばれていく。
この大きく広い地球の中で、
いくつもの必然が重なり合って
朋子と僕は出会ったよ。
まるで、この世でたったひとつしかない花を見つけるみたいに。

そして今、
幸せすぎて
涙が溢れることを知ったよ。
幸せの涙は、
森を流れるせせらぎとなり
優しく穏やかに流れていく。
それは澄んでいて、
やわらかな感触。
やがてそのせせらぎは、
碧い大海へと
ゆるやかに向かっていく。
きっと
お父さんとお母さんが、
押し出してくれているんだね。

目を閉じて。
季節が巡って木々は震える?
草花は花びらを失い、
じっと耐えて身を寄せ合う?
虫は土の中で息をひそめる?
木々の根っこに
幾重にも重なる落ち葉のざわめき。
その下に隠れた土のぬくもり。
凍えて、震えて、
やっと
そのぬくもりが体に伝わってくる。
これからは、朋子と僕が
お父さんとお母さんに
ぬくもりを伝える番だね。

太陽はどっち?
闇の中で、
草花たちはどこを向く?
じっと耳を澄まして
呼吸を止める。
こっちだね。
太陽はこっちから昇ってくる。
強靭なエネルギーを
いくつもの光の勾玉に変えながら。
お父さん、お母さん、
こっちを向いて。
朋子と僕が
お父さんとお母さんを
しっかりと照らしていくから。

目を覚ました花たちは、
大きな伸びをしながら、
弧を描くように花びらを広げていく。
もっと咲いて。
お父さんとお母さんに
数えきれないありがとうを伝えるために。
この世に生を受けたこと。
今日まで大切に育ててくれたこと。
いつも温かく見守ってくれたこと。
僕のことを誰よりも理解してくれたこと。
そして、
僕たちの結婚を祝福してくれたこと。

どうか、この想いが
お父さんとお母さんに
届きますように。
僕は、
お父さんとお母さんの子どもに生まれて
本当に良かったよ。
お父さんとお母さんのように、
これからは
朋子と二人で幸せな家庭を築いていくね。
今まで本当にありがとう。
お父さん、お母さんへの
数えきれないありがとうの想いが、
いくつもの美しい花となって
これからもずっとずっと咲き続けますように。
